モネ モネ夫人と子供 Claude Monet
モネは、【日傘をさす女】を3枚制作しています。同じ年に描いた右向きのものです。夏の陽光が降り注ぐ草原で、パラソルを片手に、風に吹かれているひと。そして一番最初にかかれた「モネ夫人と子供」。
モデルをつとめたのは、無名時代から貧困と苦労を共にした妻のカミーユ・モネでした。カミーユは、不遇の中で病魔に冒され、ついに栄光を見ることもなく32才の若さで亡くなります。
モネは、画家としてできる最大のことを決心します。
それは最もつらい作業であったこと・・・。
死の床にある妻の顔を描くことです。気がつけば時と共に変化していく妻の顔色を。恐ろしいほどの透明感、画家がそう描いているのか?カミーユがそうさせているのか?二度と帰らない永遠の一瞬。
妻の死から7年後、再び描いているのが「パラソルをさす女」です。もう目も、鼻も、口もありません。妻の最後の顔を描いた画家には描くべき理由が無くなったのかも知れません。吹き抜ける風と光だけの世界。景色の中に溶け込む、追憶。この時、新しい肖像画が生まれたのです。