平山郁夫 『楼蘭遺跡を行く(月)』 2005年再興第90回院展出品作!
技法 : リトグラフ
部数 : 130部
エディション番号 : HC
絵柄サイズ:41.6cm×88cm
額装サイズ:68.5cm×113cm
サイン:直筆サイン・印・番号入り
版数色数 : 34版34色
用紙 : フランス製ヴェラン・アルシュ紙
監修 : 平山郁夫
発行 : 日経カルチャー
制作年 : 2007年
*額装仕様はサンプルになります
楼蘭はタクラマカン砂漠のオアシス都市として発達したシルクロード上の重要国家。
紀元前77年に国王が殺され、国名が鄯善国となり、5、6世紀には衰えてしまったらしい。
いつだったかミイラが出土して大いに話題になった。
平山郁夫が最初にシルクロードに取材したのは1959年院展に出品した『仏教伝来』。
しかし実際にシルクロードを訪れたのは、それより7年後の1966年。
東京芸術大学中世オリエント遺跡学術調査団団員としてトルコ・カッパドキアに行ったのである。
以来、シルクロードの虜になってしまった。
シルクロードが彼のライフワークとなってしまったのである。シルクロードの豊穣なロマンに
惹かれたのであろう。
しかし、それは、平山郁夫という人そのものが計り知れぬロマンを内に秘めているから
なのだと思う。彼の夢がシルクロードを駆け巡るのだと思う。
その平山郁夫が中々行けなかったのが楼蘭であった。
中国でも秘境中の秘境であった。はじめて訪れたのは1986年9月、わずか49分の滞在であった。
そのときの必死のスケッチをもとに、87年春の院展に『楼蘭の遺跡』あるいは90年春の院展に
『楼蘭遺跡を行く』などを出品している。その後89年11月にも行く機会を得ている。
この作品はそれらの取材になるものであろう。
多くの歴史を秘めた楼蘭の地を行く隊商。かつて“さまよえる湖”があったことに思いを馳せる風
でもない。ただ淡々と進んで行く。
この原画は昼夜2作からなる。駱駝と人物は同一の下図を逆さにして使ったのであろう。
(日)では隊商が右から左に向かい、この(月)では左から右に向かっていく。背景の遺跡は(日)
では、近くに大きく、そして(月)ではやや離れている。わずかな違いが(日)では日中のむんむん
した空気を、(月)では満天の星のもと夜のしじまと冷気を感じさせ、好対照をなすのである。
皓々と照り輝く月の光も隊商を冷たく浮かび上がらせる。
これは、百数十回と中国シルクロードに旅する平山でも中々行けなかった地を訪れた感動と
興奮を底に秘めた作品なのである。
(美術評論家・平塚市美術館館長 草薙奈津子)
平山画伯の“青の世界”を再現
平山画伯特有の筆致と色彩を再現するため、卓越した技術と経験を持つ
版画工房の描版師(クロミスト)が原画を多色分解して1版ずつ描画していきます。
この『楼蘭遺跡を行く(月)』では、平山画伯独特の“青”を再現するため、ブルー版
だけでも夜空に6枚、山や駱駝の調子を加えると12版も刷り重ね、月夜の中での
微妙な色調の変化を精緻に表現しています。
数度にわたる色校正と、原画作品を前にしての比較検討を経て刷り上った版画
作品を、平山画伯の入念なチェックと指示に基づき、さらに修正を加えていきます。
この作品では、完成に近い版画作品に、平山画伯が直々に手を加えてくださいました。
画伯の手彩色により新たな版を加えることで、色の奥行きや空気感までもが表現され
た“深遠な青の世界”が見事に誕生しました。